桃山堂ブログ

歴史、地質と地理、伝承と神話

雑誌『ムー』に書評を載せていただきました

「世界の謎と不思議に挑戦する」を看板に掲げる雑誌『ムー』(2021年11月号)に、拙著『聖地の条件──神社のはじまりと日本列島10万年史』の書評が掲載されました。 ムー 2021年11月号 [雑誌] ワン・パブリッシング Amazon 著者は神社の始まりとして、それら…

7000万年前の巨大カルデラの跡に鎮座する琵琶湖東岸の神社

近江商人の歴史を取材する必要があって、滋賀県の近江鉄道沿線を歩きまわったばかりです。余った時間を利用して、近江商人の大量輩出地として知られる東近江市に鎮座する太郎坊・阿賀(あが)神社に参詣してきました。阿賀神社の鎮座する山は、日本列島の誕…

なぜ、10万年前を視野に入れて、「出雲」について考える必要があるのか?

最近、『聖地の条件──神社のはじまりと日本列島10万年史』(双葉社)という本を出したのですが、私がいちばん訴えたかったのは、 出雲が日本最古の聖地である謎は、出雲の10万年の歴史のなかで考える必要がある というテーマです。 友人や知り合いにできたて…

古代出雲のキーワード「玉髄」という石について

私、蒲池明弘の新刊『聖地の条件──神社のはじまりと日本列島10万年史』が8月20日、双葉社より刊行されます。今回のブログでは、本のほうには十分に書き込めなかった鉱物ネタを紹介します。 玉髄の石器、メノウの勾玉 前回、話題にした島根県のアマチュア考古…

出雲の「神様石器」と日本列島の中期旧石器時代をめぐる論争史

私、蒲池明弘の新刊『聖地の条件──神社のはじまりと日本列島10万年史』が、8月中旬、刊行されます。 本では十分に書ききれなかった話をふくめて、もろもろの話題を紹介したいと思います。 東北から消滅した日本列島最古の遺跡 日本列島で最古とされる遺跡が…

出雲で見つかった10万年くらい前とされる旧石器時代の遺跡について

『聖地の条件──神社のはじまりと日本列島10万年史』を、8月中旬、双葉社より刊行します。 出雲大社、諏訪大社、熊野本宮大社など、はじまりの時も定かではない古い神社をとりあげ、「神社のはじまり」の謎を追究する内容です。 本に書けなかった話題、掲載で…

写真家、高草操さんの新刊『人と共に生きる 日本の馬』は、美しい歴史の断片に満ちている。

高草操さんは、馬の撮影を専門分野のひとつとするフリーランスカメラマンです。馬といっても、サラブレッドをはじめとする競走馬ではなく、農業や運搬など人びとの暮らしとともにあった日本の馬たちに心を寄せています。高草さんの新著『人と共に生きる 日本…

武士は「馬に乗った縄文人」だったのか ──歴史系人気サイト「武将ジャパン」に掲載中。

文春新書『「馬」が動かした日本史』の裏テーマといいますか、本の全体を貫くテーマのひとつは「武士の誕生」をめぐる謎への探究です。 そこにポイントを置いた記事が、「武士は<馬に乗った縄文人>だったのか 」 というタイトルで、有名日本史サイト「武将…

『「馬」が動かした日本史』、北上次郎氏に紹介していただきました。

拙著『「馬」が動かした日本史』(文春新書)を、「本の雑誌」の創刊メンバーで評論家の北上次郎(目黒考二)氏に紹介していただきました。 www.nikkan-gendai.com「 「日本は『草原の国』であったという指摘が新鮮だ」という書き出しで、<なぜ、日本列島に…

古代の浅草は馬の放牧地だったのか?

内外の観光客でにぎわう東京・浅草の浅草寺。 浅草の界隈には、平安時代あるいはそれよりもずっと古い古墳時代から、馬の放牧地があったという説があります。 拙著『「馬」が動かした日本史』(文春新書)のなかから、謎多き浅草寺の歴史に関係するかもしれ…

野馬土手──千葉県の各地に残る幕府直営牧場の遺構

拙著『「馬」が動かした日本史』(文春新書)掲載のこの地図は、幕府直営牧場の領域を示したものです。江戸時代半ばの地図をもとに、千葉県が復元したものですが、下総国(千葉県北部)の五分の一くらいを放牧地が占めている印象で、にわかに信じられないよ…

寒立馬──下北半島で自然放牧される馬たち

2020年1月20日刊行の文春新書『「馬」が動かした日本史』にかかわる写真を中心に関連する記事を書いています。今回は下北半島の話題です。 下北半島の北東部突端にある尻屋崎(青森県下北郡東通村)に、自然放牧されている野飼いの馬が三十頭ほどいます。「…

古墳時代の「河内の馬飼い」の記憶をとどめる大阪府四條畷市

2020年1月20日刊行の文春新書『「馬」が動かした日本史』にかかわる写真を中心に、関連する話題を書いています。第2回は、大阪府の河内地方にあった古墳時代の馬産地についてです。 古墳時代の河内地方には、ヤマト王権の牧があったといわれています。その中…

御崎馬──宮崎県串間市に生息する半野生の馬

2019年1月20日刊行の文春新書『「馬」が動かした日本史』にかかわる写真を中心に、関連情報を紹介します。第1回は、宮崎県串間市にいる日本固有の馬である御崎馬(みさきうま)です。 宮崎県でも最も南にある串間市。さらにその南端の都井(とい)岬に、百二十…

縄文時代の「朱」の遺跡、徳島県で発見

2019年2月19日付けの新聞各紙に、徳島県阿南市で縄文時代の朱(辰砂、水銀朱)の生産遺跡が発見されるという記事が出ていました。 徳島県阿南市は、弥生時代の朱の生産遺跡のある場所として有名ですが、縄文時代にさかのぼるとは! 今後のさらなる調査が期待…

邪馬台国に関心のある方は必見! 本日10月4日発売『週刊文春』の「私の読書日記」(鹿島茂氏執筆)は邪馬台国本の紹介です。

本日10月4日(東京周辺など)発売の『週刊文春』に掲載の書評ページ「私の読書日記」は、<邪馬台国研究の秀作、傑作>というタイトルをかかげ、邪馬台国本を三作とりあげています。そのうちの一作として、拙著『邪馬台国は「朱の王国」だった』が紹介されま…

『古代氏族系譜集成』の宝賀寿男氏による拙著『邪馬台国は「朱の王国」だった』の解説的書評の紹介

『古代氏族系譜集成』という本をご存知でしょうか。 国立国会図書館の開架式の部屋のひとつ人文総合情報室には、系図・系譜にかかわる文献を並べているコーナーがあり、太田亮『姓氏家系大辞典』などの基本文献とともに、宝賀寿男氏による『古代氏族系譜集成…

縄文本・古代史本の愛読者にも超お勧め! 映画『縄文にハマる人々』

評判を聞きつけ、遅ればせながら、ドキュメンタリー映画『縄文にハマる人々』を見てきました。まったく私の個人的な観察にすぎないのですが、来ている人たちの大半は、アート系男女、スピリチュアル系女性、ディープな映画マニアであるように見えました。と…

『邪馬台国は「朱の王国」だった』が朝日新聞の書評欄で紹介されました。

拙著『邪馬台国は「朱の王国」だった』(文春新書)が、「古代国家の実像探る思考実験」というタイトルで、本日9月8日付け朝日新聞の書評欄で紹介されました。 www.asahi.com 「朱の交易が邪馬台国を盟主とする連合国家の最大のミッションであった」という記…

平野邦雄『邪馬台国の原像』──今や絶滅危惧種となった邪馬台国を論ずる東大出身の歴史学者

邪馬台国ブックリスト④ 今回、紹介するのは、2002年に出版された『邪馬台国の原像』です。今や絶滅危惧種ともいえる邪馬台国を論じる東大出身の歴史学者。平野邦雄氏はもしかすると、その最後のひとりだったかもしれない研究者です。 邪馬台国の原像 作者: …

武藤与四郎『日本における朱の経済的価値とその変遷』──日本列島の鉱山史としての邪馬台国論

朱・辰砂・水銀ブックリスト③ 朱(辰砂)の鉱山の開発が、邪馬台国の建国につながった──というユニークな論点の本が、一九六九年に刊行されています。それが今回、紹介する『日本における朱の経済的価値とその変遷』です。 鉱山史という視点から書かれた本で…

展覧会図録『縄文 1万年の鼓動』── <朱の日本史>は縄文時代に始まる

朱・辰砂・水銀ブックリスト② 今回、紹介する<朱の本>は、現在、東京・上野の国立博物館で開催中の『縄文 1万年の鼓動』の図録です。7月20日刊行の拙著『邪馬台国は「朱の王国」だった』(文春新書)の参考文献ではないですが、朱の日本史をかんがえるう…

三重県の県紙「伊勢新聞」に紹介していただきました。

伊勢新聞の8月5日付文化面で、拙著『邪馬台国は「朱の王国」だった』(文春新書)を紹介していただきました。 三重県かんれんの新刊書をとりあげる「三重の本 書評」というコーナーで、五段組の大きな扱いです。 三重県の伊勢地方は、奈良県の宇陀市・桜井市…

謎の知識人集団のウェブサイトに紹介文を載せてもらいました。

拙著『邪馬台国は「朱の王国」だった』についての紹介文を、大学時代の友人M君たちが共同運営しているウェブサイトに載せてもらいました。 winterdream.seesaa.net うちわぼめ御免 いわゆる〝うちわぼめ〟というやつですから、たっぷり眉に唾をつけて読んで…

ビジネス分野で活躍する人たちにも読んでいただきたい『邪馬台国は「朱の王国」だった』

ネット上にブックレビューを書いている人たちの集う「本が好き!」というサイトに、文春新書『邪馬台国は「朱の王国」だった』を献本しました。新作の本を無料で入手できるので、本好きの人には最適のサービスだと思いますが、レビューを必ず書くことが条件…

松田壽男『丹生の研究』──朱の歴史学の先駆けとなった名著

朱・辰砂・水銀ブックリスト① 1970年、早稲田大学文学部の教授であった松田壽男氏の『丹生の研究―歴史地理学から見た日本の水銀』(早稲田大学出版部)が刊行されたことによって、日本の歴史に朱(辰砂)・水銀が深くかかわっていることが知られるようになり…

孫栄健『決定版 邪馬台国の全解決』──〝司馬氏史観〟で読み解く試み魏志倭人伝

邪馬台国ブックリスト③ 文春新書『邪馬台国は「朱の王国」だった』を書くにあたって、邪馬台国かんけいの本を、旧作、新作とりまぜて可能なかぎり目を通しました。そのなかで最もインパクトのある本だとおもったのが、孫栄健氏の『決定版 邪馬台国の全解決』…

司馬遷『史記』──不老長寿の神仙幻想と日本列島

邪馬台国ブックリスト② 日本列島に朱・水銀の豊かな鉱床がある──。その情報が、中国文化圏にもたらされたのは、いつごろのことなのでしょうか。 文献のうえでは、三世紀後半に書かれた「魏志倭人伝」における「その山には丹あり」という記述が最初の事例です…

恋塚春雄『真説邪馬台国』──佐世保市にあった自然水銀の鉱山 

邪馬台国ブックリスト① 前回、申し上げたように、本の背景をなす<ネット博物館>構想は実現不可能という結論に至りましたので、現実的にできることとして、『邪馬台国は「朱の王国」だった』のなかで言及・参照している書籍、論文について紹介してみようと…

<未来の本>のための、実現しそうもない企画書

最近、出版した文春新書『邪馬台国は「朱の王国」だった』を手渡しかたがた、大学時代の友人と久々に会って、もろもろの話をしたのですが、この本の背景に<博物館/資料館>的なネット空間を築くことができれば面白いのに、というようなことを言われました…