桃山堂ブログ

歴史、地質と地理、伝承と神話

本の紹介

平野邦雄『邪馬台国の原像』──今や絶滅危惧種となった邪馬台国を論ずる東大出身の歴史学者

邪馬台国ブックリスト④ 今回、紹介するのは、2002年に出版された『邪馬台国の原像』です。今や絶滅危惧種ともいえる邪馬台国を論じる東大出身の歴史学者。平野邦雄氏はもしかすると、その最後のひとりだったかもしれない研究者です。 邪馬台国の原像 作者: …

武藤与四郎『日本における朱の経済的価値とその変遷』──日本列島の鉱山史としての邪馬台国論

朱・辰砂・水銀ブックリスト③ 朱(辰砂)の鉱山の開発が、邪馬台国の建国につながった──というユニークな論点の本が、一九六九年に刊行されています。それが今回、紹介する『日本における朱の経済的価値とその変遷』です。 鉱山史という視点から書かれた本で…

展覧会図録『縄文 1万年の鼓動』── <朱の日本史>は縄文時代に始まる

朱・辰砂・水銀ブックリスト② 今回、紹介する<朱の本>は、現在、東京・上野の国立博物館で開催中の『縄文 1万年の鼓動』の図録です。7月20日刊行の拙著『邪馬台国は「朱の王国」だった』(文春新書)の参考文献ではないですが、朱の日本史をかんがえるう…

高齢者およびその予備軍のための「うひ山ぶみ」(本居宣長)

本居宣長の「うひ山ぶみ」を読んだのは高校時代ですが、田舎のぐうたら高校生だった私が自主的に読むはずがないので、古文の教科書あるいは副読本に掲載されていたのだと思います。前回のエントリーで紹介した『日本の古代を読む』(上野誠編)というアンソ…

「試験によく出る評論家」小林秀雄と亀井勝一郎の共通点は美形であること。

前回のエントリーで小林秀雄の文庫本を半ば義務的に読んでいたことを書きながら思いだしたのは、亀井勝一郎です。この文人も「試験に出る評論家」として、昭和時代の高校生に推奨されていたのですが、いま私が読んでいる『日本の古代を読む』というアンソロ…

電子書籍の長さについて ── 文藝春秋社・電子書籍編集部、『アメリカの壁』の事例

文春新書『火山で読み解く古事記の謎』の刊行と同時に、電子版も発売されたということは先日、申し上げたとおりですが、文藝春秋社・電子書籍編集部の方々とはメールのやりとりがあっただけでした。 先日、打ち合わせを兼ねて、電子書籍編集部の吉永龍太部長…

徳川幕府がつくった『寛政重修諸家譜』は豊臣氏を渡来系として分類?

『寛政重修諸家譜』は徳川幕府が編纂した武家系図集の集大成です。この系図集で豊臣氏は渡来系の氏族のなかに掲載されている──ように見える謎。 『寛政重修諸家譜』のなかの豊臣氏系図 『寛政重修諸家譜』は江戸時代の大名、旗本の系図を集成した系図集です…

幕末の歴史書『大日本野史』にも「豊臣秀吉・中国人説」が出ている?

幕末の歴史家として名高い飯田忠彦の『大日本野史』にも、「豊臣秀吉・中国人説」が記されている──と断定口調でいう自信はないのですが、妙な一文が秀吉伝記に挿入されているのです。 明人羽柴官の再生? 『大日本野史』は飯田忠彦が三十年以上を費やして一…

「豊臣秀吉・中国人説」が、朝鮮王朝の高官の著作『懲毖録』に出ている

韓国KBS1で2015年に放送された大河ドラマ『懲毖録』。主演キム・サンジュン(柳成竜の役)。 http://www.kbs.co.kr/drama/jing/ 豊臣秀吉はもともと中国人なのだが、日本に渡ったあと、破格の出世をとげて、国の支配者となった──という当時の風説が、朝鮮王…

前田晴人教授の「桃太郎=豊臣秀吉」説について考える

これは愛知県犬山市の桃太郎神社。サルが家来というのも気になる。 「桃太郎」の物語は、細川幽斎が、豊臣秀吉の政治構想と業績を顕彰するために創作した近世神話である──。 大阪経済大学で歴史学の教授をなさっていた前田晴人氏は、『桃太郎と太閤さん』(…

日本史上の人物のなかで最も稲荷と縁の深い豊臣秀吉

秀吉を祭神とする長浜市の豊国神社のなかにある稲荷社。 秀吉の守護神は稲荷? 神道関係の本を多く書かれている戸部民夫氏の『戦国武将の守護神』は、勇猛果敢な戦国武将の神頼みの一面がわかって面白い本ですが、豊臣秀吉が最初に信仰したのは稲荷神である…

「日本列島をパナマ湾に移動することだって朝飯前」というテンプル騎士団の神秘のパワー?

世界一すごいトンデモ本 前回、ウンベルト・エーコの小説『フーコーの振り子』を、出版ビジネス本として読んだ感想を書いたわけですが、出版業界は作品の舞台であるにすぎません。 作品としてのテーマは、ヨーロッパの本の世界の<裏文化>のようなものです…

自費出版ビジネスの迷宮

業界暴露本として読む『フーコーの振り子』 ウンベルト・エーコの『フーコーの振り子』は、『薔薇の名前』に次ぐ二作目の小説です。 イタリアの小さな出版社を舞台にした小説だとなんとなく聞いたことがあるくらいで、刊行当時、手にすることはありませんで…

『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』について

電子書籍とかアマゾンキンドルの話題が出ていそうで実は…… 前回、すこしだけ触れた『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』日本語版の発売は二〇一〇年十二月です。 二〇一〇年は電子書籍への関心が最高潮に達していたときです。 この年、「電子書籍」に…

国会議員も市会議員も「くじ引き」で選ぼう!

自分撮影。海は遠いので川の波です。 トフラーさんの選挙制度改革案 国会議員、地方議員は、くじ引きで選ぶのも一案ではないか──。 最近、読んだその本にそう書いてあるのをみて、その通り! だと拍手喝采しました。 一九八〇年ごろ、高校生だった僕は、父親…

散らかってますが、トフラーさんの予言みたいな僕の仕事場

電脳住宅の未来 イギリスのEU離脱が決まった国民投票の直後、読売新聞朝刊の一面コラムで、アルビン・トフラー氏の『第三の波』が引用されていました。 何十年ぶりかで読み返してみると、おどろくほど新鮮です。現在の自分に照らして、考えさせられること…