桃山堂ブログ

歴史、地質と地理、伝承と神話

6年まえの3月11日、国立国会図書館の机の下でいろいろ考えたこと

二〇一一年三月十一日午後二時四十六分、あの地震が起きたとき、私は東京・永田町にある国立国会図書館で、ちまちまとした調べものをしていました。文春新書『火山で読み解く古事記の謎』を書くことになったそもそもの発端は、あの地震にあるのですから、き…

個人が本屋さんになることのできる時代は、もうそこまで来ている

電子書籍にかかわるニュースは、できるだけウォッチするようにしていますが、「じぶん書店」のニュースは最近で、いちばん想像力を刺激されました。 スマホ一台あれば、誰でも、書店主になれるというサービスを、講談社とメディアドゥがはじめるそうです。以…

ロシアの革命家にして、早稲田大学の教師──A・ワノフスキー

アレクサンドル・ワノフスキー(一八七四~一九六七)というロシア人が、戦前から戦中期まで、早稲田大学でロシア語やロシア文学を教えていました。私が文春新書『火山で読み解く古事記の謎』を書くことになったそもそもの原因は、ワノフスキーにあるのです…

突然ですが、文藝春秋社から本を出すことになりました。

個人出版社・桃山堂を運営する蒲池明弘はこのたび、文藝春秋社から本を出すことになりました。『火山で読み解く古事記の謎』というタイトルで、文春新書の一冊として、三月十七日に刊行されます。 このブログは、電子書籍の話題を中心に桃山堂の取り組みを紹…

羽犬伝説の筑後地方(福岡県南部)で、火山が激しく活動していたころ

私が個人営業している桃山堂という零細出版社は、このブログでメインテーマとしている秀吉伝説のほか、『火山と日本の神話──亡命ロシア人ワノフスキーの古事記論』という火山神話の本も出しています。 どうして、秀吉と火山なのだ、あまりにも支離滅裂ではな…

あまりにも個人的な関心、というか地縁からスタートした電子書籍シリーズ「秀吉伝説集成」

桃山堂の電子書籍シリーズ「秀吉伝説集成」は、編集者であり著者陣のひとりでもある蒲池明弘のあまりにも個人的な関心事からスタートしています。紙の本では難しいニッチなこだわりを作品化できるところが、電子書籍のメリット。 とはいえ、当然の結論ながら…

秀吉と羽犬伝説と前方後円墳

福岡県筑後市の羽犬塚という地名の発祥をめぐって、豊臣秀吉と「羽犬」すなわち翼のある犬の伝説が語られています。こじつけめいた話をいろいろ書いてしまいましたが、私が秀吉と羽犬の伝説が気になって仕方がない最大の原因は、羽犬伝説の地、筑後エリアに…

羽犬伝説──「金属を探す犬」という民俗学的知見から考えると

福岡県筑後市の羽犬塚という地名の発祥をめぐって、豊臣秀吉と「羽犬」すなわち翼のある犬の伝説が語られています。そもそも、どうして犬なのだという疑問を解き明かす手がかりを、「金属を探す犬」という民俗学のキーワードに求めてみます。 (以下の記事は…

羽犬伝説と黄金アイランド・九州

福岡県筑後市の羽犬塚という地名の発祥をめぐって、豊臣秀吉と「羽犬」すなわち翼のある犬の伝説が語られています。前回は、黄金を守護する聖獣グリフィンと羽犬との形態的類似について話題にしました。今回は、羽犬が黄金にかかわる可能性について、羽犬伝…

秀吉伝説の「羽犬」は黄金の聖獣グリフィンと似ている?

福岡県筑後市の羽犬塚という地名の発祥をめぐって、豊臣秀吉と「羽犬」すなわち翼のある犬の伝説が語られています。一方、古代西洋の伝説には、翼のある聖獣グリフィンが登場します。グリフィンに比べると、羽犬伝説はあまりにもマイナーですが、黄金という…

羽犬伝説──秀吉ゆかりの「翼のある犬」の正体は何なのか?

羽犬塚という町は福岡県筑後市の中心部にあります。「はいぬづか」と読むちょっと変わったこの地名の発祥をめぐって、豊臣秀吉と「羽犬」すなわち翼のある犬の伝説が語られています。今回は、電子書籍シリーズ「秀吉伝説集成」の一作『秀吉と翼の犬の伝説』…

電子書籍の立ち読みリンク ── 実験的プロジェクトに参加します。 

電子書籍の立ち読み、試し読みはすっかり定着していますが、このほど、フライングラインという会社がおこなっている「立ち読みリンク」の実験的なプロジェクトに参加することになったのでその報告です。 電子書籍シリーズ「秀吉伝説集成」の試し読み 百聞は…

『秀吉と翼の犬の伝説』のネット書評

fum2.jp 弊社刊行電子書籍『秀吉と翼の犬の伝説』について、「フムフム」という書評サイトに、書評が掲載されました。 書いていただいたのは、電子書籍のセルフパブリッシャーでライターとしても活躍している忌川タツヤ氏です。 先に紹介した歴史研究書『秀…

ボイジャー社の電子書籍作成セミナーに参加したこと

二〇一六年十月十四日、ボイジャー社でおこなわれた電子書籍の制作にかんするセミナーに出席しました。桃山堂の電子書籍シリーズ「秀吉伝説集成」は、ボイジャー社が提供するEPUB変換サービスを使わせていただいたので、今回はこのセミナーについて報告…

超零細出版社にとって、電子書籍EPUBファイルの自作は最低条件

どうして電子書籍のEPUBファイルを自分で制作する必要があるかというと、専門の業者に依頼するとけして安くはない料金がかかるという至極単純な理由によります。 福岡県筑後市、JR九州の羽犬塚駅前の羽犬像。桃山堂電子書籍『秀吉と翼の犬の伝説』より…

電子書籍づくりの魅力はコストを気にせずカラー写真を使えること

今回、電子書籍を制作して実感したことのひとつは、コストを気にせず、カラー写真をふんだんに使えることです。紙の本との比較でいうと、これは電子書籍の大きなメリットだとおもいます。 美濃赤坂の地名の由来は赤い土にある 上記の風景写真は、電子書籍シ…

電子書籍の写真はタテが良い──考えてみれば当たり前の教訓

電子書籍を読むのはタブレットにしろ、スマホにしろ、縦長の画面ですから、写真などの画像はタテが良い──というのは電子書籍制作になれた人にとっては当たり前でしょう。 私はボンヤリしていて気がつかず、最後になって、写真をほぼ総替えすることになり、結…

電子書籍をシリーズとして出版する〝戦略〟的な裏事情

電子書籍シリーズ「秀吉伝説集成」の発売がアマゾンをはじめとする電子書籍ストアではじまりました。今回、5作品を同時刊行、2017年のうちに計10作品をそろえる計画です。 桃山堂はライター仕事をしながら、細々とやっている文字どおりの個人営業の出版社で…

電子書籍販売の困難さについて

小さな個人営業の出版社を運営しておもうのは、本を販売するのはたいへんだということですが、電子書籍の販売は、それ以上に、そして紙の本とは違った困難があるようです。なぜ、電子書籍を届けることは難しいのか。弱小出版社の大きなテーマです。 電子書籍…

知らないうちに電子書籍は無料ツールで簡単にできる時代になっていた。

二〇一四年、はじめて電子書籍をつくってなんとか刊行したものの、その後、電子書籍の制作は中断してしまいました。ネット、パソコンの技能にうとい文系人間には、ハードルがあまりにも高かったからです。ところが、電子書籍づくりから離れていたこの三年で…

ブログと電子書籍①  作成の所要時間について

今日は、ブログと電子書籍を比較して、そのメリット、デメリットを考えてみます。これはこのブログをはじめた目的のひとつでもあるので、今日の話題というより、このブログの長期的なテーマにできればとおもっています。 ドーンセンター(大阪府立女性総合会…

サイト名を「桃山堂ブログ」に変更します。

以前、勤務していた新聞社を辞めたところからはじめて、その後の出版体験を時系列的に書いていこうという構想でブログを開設したのですが、いつのまにやら、「歴史ブログ」になってしまいました。 行き当たりばったりで恥ずかしいかぎりですが、「個人出版モ…

徳川幕府がつくった『寛政重修諸家譜』は豊臣氏を渡来系として分類?

『寛政重修諸家譜』は徳川幕府が編纂した武家系図集の集大成です。この系図集で豊臣氏は渡来系の氏族のなかに掲載されている──ように見える謎。 『寛政重修諸家譜』のなかの豊臣氏系図 『寛政重修諸家譜』は江戸時代の大名、旗本の系図を集成した系図集です…

「豊臣秀吉・中国人説」は東アジア世界に拡散していた

勇(いさむ)や(1368年)明の朱元璋、この年、建国。 極貧からの出発、晩年の理不尽な粛正、秀吉とは共通点のある明の創始者。 突然の朝鮮出兵によって、豊臣秀吉は明(中国)や朝鮮の知識人社会では「時の人」となり、さまざまな書籍や公文書で「Hidey…

幕末の歴史書『大日本野史』にも「豊臣秀吉・中国人説」が出ている?

幕末の歴史家として名高い飯田忠彦の『大日本野史』にも、「豊臣秀吉・中国人説」が記されている──と断定口調でいう自信はないのですが、妙な一文が秀吉伝記に挿入されているのです。 明人羽柴官の再生? 『大日本野史』は飯田忠彦が三十年以上を費やして一…

「豊臣秀吉・中国人説」が、朝鮮王朝の高官の著作『懲毖録』に出ている

韓国KBS1で2015年に放送された大河ドラマ『懲毖録』。主演キム・サンジュン(柳成竜の役)。 http://www.kbs.co.kr/drama/jing/ 豊臣秀吉はもともと中国人なのだが、日本に渡ったあと、破格の出世をとげて、国の支配者となった──という当時の風説が、朝鮮王…

豊臣秀吉を渡来人の子孫とする謎の系図

国立国会図書館に所蔵されている『諸系譜』という系図集に、豊臣秀吉を渡来人の子孫とする系図が掲載されています。『諸系譜』とは、幕末生まれの国学者たちが収集した系図資料がまとめられたものです。 国立国会図書館で『諸系譜』を見る 現代の戦場という…

豊臣秀吉 もうひとつの「一夜城伝説」と渡来系大名・秋月氏

九州版「一夜城」の舞台、益富城(大隈城)はこの山にあった。小雨のなか、撮影。(福岡県嘉麻市) 豊臣秀吉の一夜城伝説──。それは織田信長の家臣時代の秀吉が木曽川流域の墨俣に驚くべき短期間に城を築いたという伝承ですが、福岡県嘉麻市ではもうひとつの…

治水技術と渡来人──成富兵庫と豊臣秀吉を系譜的に考える

成富兵庫の代表的な治水事業「石井樋」。洪水防止に加え、上水道のことも考慮されている。 http://www.maff.go.jp/j/nousin/sekkei/museum/m_izin/saga/ (画像は農水省ホームページ「土地改良偉人伝」より転載。以下の写真も同) 佐賀県では<治水の神さま…

岩屋城の猛将・高橋紹運と豊臣秀吉は系図のうえでは渡来人の子孫

岩屋城二の丸は戦死者の墓域になっている。 福岡県・太宰府天満宮の裏山にある岩屋城の戦いで、壮絶な籠城戦の末に絶命した高橋紹運(鎮種)。高橋氏の系譜は、渡来系の有力氏族である大蔵氏につらなっています。 渡来系の名族・大蔵氏の一族 前回のエントリ…