キツネが大好きな油揚げの正体は「土器」なのか?
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キツネは赤いが、「お土器」も赤い
ウィキペディアで今、知ったばかりのことを書くのも何なのですが、日本に棲息するキツネの正式名称を「アカギツネ」というそうです。
その名のとおり、毛皮は赤みを帯びた褐色を基調とする。
日本には、他のキツネ属の動物は自然分布しないため、日本語で単に「キツネ」というときは、通常アカギツネを指す。
英語では、Red Fox というそうですが、その直訳が「アカギツネ」なのだとおもいます。
言われてみると、確かに、毛の色はほんのりと赤みがかっています。
前回のエントリーでは、伏見稲荷大社で毎年一月五日に開かれる大山祭は「お土器の行事」ともいい、稲荷大明神に土器を奉る新年早々のたいせつな祭であることを紹介しました。
この祭祀でつかわれる土器もけっこう赤いのです。
わが家のお宝、伏見稲荷の「お土器」
一月五日の大山祭は土器が主役の神事。
某メーカーのカップ麺は、
赤いキツネに緑のタヌキ ♪
です。
いなり寿司の色も、ウィキのアカギツネの説明文「赤みを帯びた褐色」をそのまま借用できます。
ファミリーマートで購入したいなり寿司。
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キツネの毛の色が油揚げの色に似ているという説も
キツネは本来、肉食ですから、油揚げが好物だということはありえないそうです。
これについては諸説あって、油揚げの色が、キツネの毛の色と似ているので、キツネは油揚げが大好きという信仰が発生したという説もあります。
その通りだとおもいます。
しかし、稲荷信仰の総本山ともいえる伏見稲荷大社の、年明け早々の重要な祭祀は、別名「お土器の行事」で、土器が主役の神事です。
古代以来、土師氏が居住し、土器づくり、土人形づくりが行われていた伏見では、粘土の採取地でもある稲荷山の神に、土器を捧げることは理屈にあっています。
それをみると、お稲荷さまには、土器をお供えするのが正式なのではないかという疑惑が生じます。
毎回それではたいへんだから、ふだんの日は、土器とよく似た色をした油揚げですましている──ということなのではないでしょうか。
キツネは土器の美しさを体現しているのか
現代のわれわれは、釉薬で美しく装った陶器、磁器をみなれているので、土器というと、縄文人がつかっていた原始的な皿という程度に考えがちです。
しかし、土器には土器の美しさがあるはずです。
おそらくそれは、濃い茶色に黒焦げがあるようなものではなく、黄土色や茶褐色にほんのりと鉄分の赤がにじんだような色合いだったのではないでしょうか。
お手数ですが、上記のキツネの写真をもう一度、みていただければとおもいます。
左目のまわりから顔全体にかけての、赤と茶色のグラデーションは、美しい土器の焼き加減と一致していると考えるのは、過剰なコジツケでしょうか。
この類似によって、土器や「土」そのものへの信仰が、キツネを神聖視する観念に変じたのではないでしょうか。
こうしたストーリーを想定すると、伏見稲荷大社を舞台とする「伏見/土器/キツネ」の三題噺がうまくまとまるようにおもえます。
「土」の視点から、秀吉と稲荷神のかかわりを考えているうちに、油揚げが、土器片に見えてきた──というキツネに化かされたような話になってしまいました
(つづく)
http://jomontaro.web.fc2.com/newpage40.htm に掲載の写真
Jomontaro氏が五〇〇円で購入したという縄文土器の破片。中央左のものは、いなり寿司に見えなくもない。 その右のものは、きつねうどんの油揚げ?