桃山堂ブログ

歴史、地質と地理、伝承と神話

自費出版に毛のはえた程度の出版社、苦悶の日々の報告です。

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自分撮影。ブログ開設日の空。

ハウスクリーニング会社の社長さんは疑惑のまなざしで僕をみすえた

法律のうえで、僕は出版社の社長さんです。名刺にも桃山堂株式会社代表取締役社長と印刷されています。

実態をあらわしていないような気がして、初対面で名刺をわたすときなど、嫁さんにウソをついているときに似た不安感におそわれます。

 

二年くらいまえのことです。

企業のホームページ作成をテーマとする勉強会でした。

 

主催者は、
「せっかくの機会ですので、皆さまの席の右、左、前、後、四人のかたと名刺交換をして、人脈をひろげてください」
とうながしたのです。

右に座っていた人は、ハウスクリーニングの派遣サービス会社を経営していると言っていました。

名刺をうけとったその人は、
「出版社とはずいぶん立派なお仕事で」
と言いつつ、疑惑の表情で僕の姿と名刺を見比べます。

 

代表取締役という肩書きにふさわしくないソワソワした物腰に、うたがわしさを感じているのでしょうか。

 着ている服が、五年まえに買ったユニクロだとばれているのかもしれません。

 それとも、ボサボサの髪の毛に千円カットハウスの残影を見ているのでしょうか。

 

まるで言い訳でもするように、
「出版社といっても、ごく小さな規模です。一人だけでやっています」
と答えました。

「従業員はお一人ですか。それはたいへんですねえ」
とその社長さんは表情をすこしやわらげます。

「従業員が一人ではないんです。わたしが、一人でやっているんです」

「え!?」

「取材・執筆/編集/営業マン/広告担当/経理担当、全部、わたしの仕事です。出版業界には、一人出版社という言葉もあるくらいですから、そんなに珍しいことでもないみたいですが」

 

ハウスクリーニング会社の社長さんとの話ははずまないまま、次の人との名刺交換に移ってしまいました。

 

一人出版社といってもピンからキリまでありまして

出版社といっても、東証一部上場のKADOKAWA(角川)、学研など大企業から、僕がやっている桃山堂のような一人出版社まであって、ピンキリです。

 

一人出版社といっても、その内実はさまざまで、このなかでもピンからキリまでいろいろです。

夏葉社、土曜社、共和国のようにその筋では有名な一人出版社もあります。もしかしたら、スタッフが増えて、一人出版を脱しているかもしれません。

 

あのミシマ社も最初は一人出版社でした。出世魚のように飛躍して、すっかりメジャーです。

 

一年に新作を十作くらいだしているアグレッシブな一人出版社もあります。僕の場合、一年に一、二冊、出すだけで手一杯なので、キリもキリ、出版業界のヒエラルキーの最底辺です。

 

二〇一四年一月に最初の本を出して、紙の本を四冊、出しています。電子書籍は一冊だけですが、今年は、電子書籍に本腰をいれようとしています。生産性は低いです。出版社を名乗れるかどうか、微妙な水準といわざるをえません。

 

日本には約四〇〇〇社の出版社があるというデータをみますが、正確な数字はよくわからないともいわれています。

 

ラーメン屋を開業するなら、保健所などへの届け出が必要です。

 

古書店の開業には、ネット書店であっても、警察署へ届けることが義務づけられています。

 

出版社は、どこにも届けず、誰にも告げず開業できます。だから、誰も日本に何社の出版社が活動しているのか、正確にはわからないそうです。

 

この四〇〇〇社のなかに、僕の会社はふくまれているのでしょうか。どちらにしても端数です。

 

社員全員が高齢者で、会社事務所には出てくるけれど、新しい本を出すというわけでもなく、お茶をのんで、話をして、ご飯をいっしょに食べて──という出版社があるという話を聞いたことがあります。僕は勝手に想像して、社長が九十歳、社員はみんな八十代という出版社をイメージしていたのですが、全員が年金受給者なので、給与をあてにしていないのでしょうか。もしかすると、すごい企画をねっているところなのかもしれません。

謎です。

でも、楽しいそうです。

人生いろいろ、出版社もいろいろです。

 

 BMWで行こう! 

桃山堂というきわめて個人的な出版事業を、わかりやすく、印象的に伝える言葉やキャッチフレーズはないものか。

このブログのサイト名を決める段階で、いろいろ思案しているのですが、ピッタリのものはみつかりません。

 

「一人出版社」という便利な業界用語があるので、つい、自己紹介でつかってしまいますが、この言葉にも敷居の高さを感じています。

 

一人出版社には、有名な出版社にいた有能な編集者が独立してはじめたというケースが少なくありません。

一人前の編集者だから、一人でできるという面があるとおもうのです。

 

僕は読売新聞社で記者として勤務したことはありますが、書籍の編集経験はまったくありませんでした。図書館で調べ、ネットで検索し、付け焼き刃の知識をかき集めて、なんとか本をつくっています。とてもプロの編集者といえる水準ではないのです。

 

半人前ですから、「ハーフ出版社」でもいいのですが、美女を連想させるので採用しかねます。

 

僕の場合、業務時間の七〇パーセントくらいを、取材および原稿執筆が占めています。

つまり、ライターとしての仕事です。

ライターとしての僕は、自分に興味のあるテーマを取材し、執筆する「場」として、出版社をつくりました。それが桃山堂の実態です。

 

すこしおしゃれに言えば、売れ線とは違ったアバンギャルド志向のミュージシャンが、自分でインディーレーベルをたちあげて、CDを出すようなものです。

 

名もない映画監督が、知り合いからお金をかきあつめ、映画を自主制作するのに似ているかもしれません。

 

簡単にいえば、貧乏なライターがはじめた、自費出版にかぎりなく近い出版社ということです。

 

こうした労働の実態をあらわすため、

ブックメーカー&ライター」という言葉もかんがえてみました。

 

ブックメーカー、つまり、「本を作る人」兼「ライター」の会社です。 

 

省略するとBMW

はからずも高級感をかもしだしてしまうのは問題点です。

わが家にある「車もの」は、以前、保育園の送迎につかっていたママチャリだけです。ただし、電動機がついています。自転車としては、ハイグレードです。

 

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ところが、辞書で調べたらブックメーカーは、「賭け事で掛け率を決める人」とありました。

そういえば、イギリスのブックメーカーが、どうしたこうしたというニュースは耳にします。カタカナ日本語に定着していないので、忘れていました。残念ながらボツです。

 

ブックメーカー&ライターは、シンガー&ソングライターのモジリのつもりでした。

僕が小学校の高学年のころですから、はるか昭和の四十数年まえ。改めて自分の年齢を感じてしまいます。そのころ、「シンガーソングライター」という言葉が突如、子どもたちの言語圏にも入ってきました。

 

井上陽水吉田拓郎などが活躍したころで、自分で作詞、作曲し、演奏しながら歌うというスタイルは、歌謡曲/演歌の高度に分業化されたシステムに対するアンチテーゼであったと、昭和音楽史では解説されているようです。

たしかにそうかもしれませんが、お金がないから、ぜんぶ自分でやっていたともいえます。

 

資金力がないことの開き直りですが、僕がはじめた出版社も、アンチ分業システムです。

ここは売れない時代のシンガーソングライターと共通点です。

 

自分でできることは自分でやって、本をつくっています。
Do it yourself です。目指すのは「DIY出版」です。

 

DIY精神で、アマチュアリズムの良き面を追究します。

 

日本語でいうと、どうなるでしょうか。

アマチュアはカタカナ日本語で定着していますが、愛好家とか好事家という訳語もあります。

 

「本づくりの愛好家」

「文章を書くことが好きな人」

 

自己紹介するとしたら、そんなところです。

ヘタの横好きです。

これをブログタイトルにすると、よけい混乱しそうです。

いまひとつですが、無難なところで、ブログのタイトルには、
個人出版
をつかうことにしました。

自分自身の個人的事情と個人的関心からはじめた小さな出版事業だからです。

 

という次第で、サイト名は
個人出版 モタモタ実験工房」
とさせていただきました。

 

ブログというスタイルで、文章を発表するのははじめてのことです。

わからないこと、ばかりですので、ご教示をねがう次第です。

不備な点、失礼な点があるかもしれませんが、どうぞよろしくお願い申し上げます。