ボイジャー社の電子書籍作成セミナーに参加したこと
二〇一六年十月十四日、ボイジャー社でおこなわれた電子書籍の制作にかんするセミナーに出席しました。桃山堂の電子書籍シリーズ「秀吉伝説集成」は、ボイジャー社が提供するEPUB変換サービスを使わせていただいたので、今回はこのセミナーについて報告します。
東京・渋谷区のボイジャーの本社会議室で開かれたセミナー。説明者のヨコ、写真右側でぼけーっと話を聞いているグレーのジャケットを着た人物が私です。
EPUB変換──電子書籍におけるちょっとした障壁
EPUBという言葉をご存じでしょうか?
たとえ電子書籍を日常的に読んでいる人も、もしかすると知らないかもしれません。
というか知らなくても、まったく何の支障もない業界用語ではないでしょうか。
私もEPUBとは何なのかを説明する能力がありません。
ウェブサイトの裏にある技術HTMLの一種だと聞きますが、ちんぷんかんぷんです。
ただ、電子書籍のストアに納めるとき、EPUBファイルであることが条件となっています。
ファイル名の最後についている拡張子が、.epub じゃないとダメということです。
一般読者的にはどうでもいいEPUBですが、個人であろうと会社組織であろうと、電子書籍を出すうえで、ちょっとした障害となっているのが、このEPUBファイルへの変換という問題です。
絶妙のタイミングで開催されたロマンサーセミナー
十月上旬、電子書籍五作品の原稿はだいたい仕上がったのですが、EPUBファイルの作成をどのような手段で行うか、まったく方針が決まっていませんでした。
EPUB変換を外注すると当然、有料(たぶん一万から二万円)なので、超零細出版社を運営する私としては、自分でできる範囲のことは自力でやって、あとは多少、お金がかかっても技術的なサポートをしてくれるようなサービスがあればいいなあ、とおもっていました。
デジタル方面はけして得意ではないので、私にとって、サポートは必須条件なのです。
いま、メールの記録を見てみると、ボイジャー社へセミナー参加を申し込んだのは開催二日まえの十月十二日でした。
検索かなにかで、偶然、目にしたのです。
毎月やっているセミナーではなく、不定期の開催のようなので、絶妙のタイミングというか、ラッキーでした。
この時点では、ボイジャー社がネット上のクラウドサービスとして提供しているEPUB変換ツール「ロマンサー」が自分のような超零細出版社にふさわしいかどうか不明だったので、別の会社が開催する説明会にも参加を申し込んでいました。
ボイジャー社の「ロマンサー」は、50MBまで無料をうたっているわけですが、これは純粋に個人が行うセルフパブリッシングにしか適用できないとおもっていました。
50MBという上限が、何を意味するかもよくわかりませんでした。
セミナー本番がはじまる前、雑談のなかで、まず質問したのはそのことでした。
質問した相手は、ロマンサーの担当のKさんです。
メモしたり、録音しているわけではないので、私の記憶にもとづく再現です。
細部は不正確ですが、おおよそこんな趣旨の問答でした。
わたし 「個人営業の超零細出版社ですが、電子書籍を本格的にはじめたいとおもい、準備をしているところです。ロマンサーの場合、50MBまで無料というものと、月額二万五千円というものの二種類があるようですが、その間の料金設定があれば、検討したいとおもっているのですが」
Kさん 「電子書籍は何作品くらい、作る予定ですか」
わたし 「年内に五作品、来年は一年間で十作品くらいだとおもいます」
Kさん 「五作品くらいなら、50MB以内で収まるとおもいますよ。万一、それを超えても有料五百円で150MBまで利用していただけます」
わたし 「でも、50MB以内なら無料というのは、個人のセルフパブリッシングにしか利用できないのではないですか」
Kさん 「出版社が販売目的で使っていただいても問題ありません」
わたし 「え! そうなんですか。てっきり、個人だけかとおもっていました。ただ、私の場合、デジタル、ネット領域について、基本知識が欠落しているので、多少、お金を払ってでも、きちんとしたサポートのあるところでないと、不安なのです」
Kさん 「メールで問い合わせをしていただければ、だいたいのことは、お答えできるとおもいます」
わたし 「え! そうなんですか。てっきり、無料だけど、サポートはないという設定だとおもっていました」
Kさん 「JPEGって、どういう意味ですか、という類の質問はさすがに困りますが、ロマンサーで電子書籍を作るうえでの技術上の質問であればOKです」
セミナーの内容は、ワープロソフトのワードをつかって、見出しをつけ、画像を挿入したファイルを作れば、あとはロマンサーで変換するだけというシンプルな方法を、実践的に解説するものでした。
これなら、自分にでもできそうだ、と確信がもてました。
だいたい二か月でEPUB電子書籍が完成した
この日から、猛然とEPUB作りに邁進して、ボイジャー社のサポートをうけながら、電子書籍を五作品、作成し、十二月上旬には発売開始になりました。
セミナーに参加した十月中旬の段階では、五里霧中であったことからすると、二か月足らずで完了したのは思いのほかのことでした。
結論を申し上げれば、電子書籍を作るうえで、EPUB変換という障害は確かにあるけれども、それは消滅しはじめているということです。
デジタルに自信のない、ど文系の五十代の元新聞記者でも、時間をかければできる程度には、電子書籍づくりの障害は低くなっているということです。
いま、こうやってブログと電子書籍づくりを併行してやり始めているわけですが、電子書籍づくりはブログよりもすこしだけ面倒──という程度ではないかとおもいます。
結局、私がボイジャーに支払ったのは、何千円かのセミナー参加費だけですが、セミナーに行かなくても、なんの問題もないくらい制作方法はシンプルです。
ロマンサーをつかった電子書籍づくりの詳細は、追って報告します。
(つづく)