電子書籍の立ち読みリンク ── 実験的プロジェクトに参加します。
電子書籍の立ち読み、試し読みはすっかり定着していますが、このほど、フライングラインという会社がおこなっている「立ち読みリンク」の実験的なプロジェクトに参加することになったのでその報告です。
電子書籍シリーズ「秀吉伝説集成」の試し読み
百聞は一見にしかず。まずは、どれかの「立ち読みリンク」を見ていただければ、ありがたいです。弊社刊行の電子書籍シリーズ「秀吉伝説集成」の中身紹介です。
『秀吉と翼の犬の伝説』
https://yondemill.jp/contents/20631?view=1&u0=3
『古墳と秀吉』
https://yondemill.jp/contents/20670?view=1&u0=3
『尾張中村日の宮伝説』
https://yondemill.jp/contents/20669?view=1&u0=3
『豊臣秀吉の系図学』
https://yondemill.jp/contents/20671?view=1&u0=3
『黒田官兵衛目薬伝説』
https://yondemill.jp/contents/20672?view=1&u0=3
電子書籍の立ち読みは、アマゾンキンドルをはじめとして、多くのストアでやっていますが、この立ち読みリンクが、私が自分で長さを決めて作成し、このブログにはりつけています。
フライングライン社が提供しているyondemilというサービスをつかっています。
出版社側が支払う料金は発生しません。
試し読みは途中までで、そのあとは有料という仕組みも基本的にはほかと同じだとおもいますが、この立ち読みリンクの場合、パソコンのブラウザーで、そのまま全部、読めてしまうということがセールスポイントのひとつだとおもいます。
正直なところ、立ち読みでもいいから、読んでいただければとありがたいとおもい、通例よりは、多少、長めの立ち読み範囲にしております。ぜひ、お目通しください。
著者のブログなどを〝お店〟にしてもらう
この仕組みがおもしろいのは、本の著者など関係者がやっているブログ、ウェブサイトにリンクをはってもらえれば、そこが、もうひとつの販売窓口になるということです。
『豊臣秀吉の系図学』の著者の日本家系図学会会長、宝賀寿男氏たちのグループが運営しているウェブサイトに、『豊臣秀吉の系図学』の立ち読みリンクをはっていただきました。
http://wwr2.ucom.ne.jp/hetoyc15/kousin-rireki.htm
古代氏族から中世の武家系図にいたるまで、系図関係の情報が満載のサイトなので、興味ある方はそちらの中身のほうもご覧ください。
弊社のような知名度のとぼしい出版社が電子書籍を出すうえでの最大の問題は、アマゾンキンドルに登録しても、完全に埋没して、関心をもってくれそうな人にもなかなか届かないという問題です。
著者のブログ、サイトに立ち読みリンクを載せるということは、とりあえず、関心をもってくれそうな人に情報を届ける有力なツールにはなるとおもいます。
以下のサイトに、サービスのことが紹介されています。
『秀吉と翼の犬の伝説』のネット書評
弊社刊行電子書籍『秀吉と翼の犬の伝説』について、「フムフム」という書評サイトに、書評が掲載されました。
書いていただいたのは、電子書籍のセルフパブリッシャーでライターとしても活躍している忌川タツヤ氏です。
先に紹介した歴史研究書『秀吉と翼の犬の伝説』では、現実的な考察もおこなわれています。なかでも「秀吉が犬をつれていた理由」についての仮説の数々は、興味深いものばかりです。
たとえば「すぐれた嗅覚をもつ犬に金鉱脈を探させるため」というものです。火山が立ち並ぶ九州地方は、日本有数の「金の産出地」でもあります。「ここほれワンワン」というわけです。
「黄金の茶室」で知られる金ピカ大好きな秀吉のイメージに照らし合わせると納得できました。
読みごたえのある書評です。ぜひ、ご覧ください。
ボイジャー社の電子書籍作成セミナーに参加したこと
二〇一六年十月十四日、ボイジャー社でおこなわれた電子書籍の制作にかんするセミナーに出席しました。桃山堂の電子書籍シリーズ「秀吉伝説集成」は、ボイジャー社が提供するEPUB変換サービスを使わせていただいたので、今回はこのセミナーについて報告します。
東京・渋谷区のボイジャーの本社会議室で開かれたセミナー。説明者のヨコ、写真右側でぼけーっと話を聞いているグレーのジャケットを着た人物が私です。
EPUB変換──電子書籍におけるちょっとした障壁
EPUBという言葉をご存じでしょうか?
たとえ電子書籍を日常的に読んでいる人も、もしかすると知らないかもしれません。
というか知らなくても、まったく何の支障もない業界用語ではないでしょうか。
私もEPUBとは何なのかを説明する能力がありません。
ウェブサイトの裏にある技術HTMLの一種だと聞きますが、ちんぷんかんぷんです。
ただ、電子書籍のストアに納めるとき、EPUBファイルであることが条件となっています。
ファイル名の最後についている拡張子が、.epub じゃないとダメということです。
一般読者的にはどうでもいいEPUBですが、個人であろうと会社組織であろうと、電子書籍を出すうえで、ちょっとした障害となっているのが、このEPUBファイルへの変換という問題です。
絶妙のタイミングで開催されたロマンサーセミナー
十月上旬、電子書籍五作品の原稿はだいたい仕上がったのですが、EPUBファイルの作成をどのような手段で行うか、まったく方針が決まっていませんでした。
EPUB変換を外注すると当然、有料(たぶん一万から二万円)なので、超零細出版社を運営する私としては、自分でできる範囲のことは自力でやって、あとは多少、お金がかかっても技術的なサポートをしてくれるようなサービスがあればいいなあ、とおもっていました。
デジタル方面はけして得意ではないので、私にとって、サポートは必須条件なのです。
いま、メールの記録を見てみると、ボイジャー社へセミナー参加を申し込んだのは開催二日まえの十月十二日でした。
検索かなにかで、偶然、目にしたのです。
毎月やっているセミナーではなく、不定期の開催のようなので、絶妙のタイミングというか、ラッキーでした。
この時点では、ボイジャー社がネット上のクラウドサービスとして提供しているEPUB変換ツール「ロマンサー」が自分のような超零細出版社にふさわしいかどうか不明だったので、別の会社が開催する説明会にも参加を申し込んでいました。
ボイジャー社の「ロマンサー」は、50MBまで無料をうたっているわけですが、これは純粋に個人が行うセルフパブリッシングにしか適用できないとおもっていました。
50MBという上限が、何を意味するかもよくわかりませんでした。
セミナー本番がはじまる前、雑談のなかで、まず質問したのはそのことでした。
質問した相手は、ロマンサーの担当のKさんです。
メモしたり、録音しているわけではないので、私の記憶にもとづく再現です。
細部は不正確ですが、おおよそこんな趣旨の問答でした。
わたし 「個人営業の超零細出版社ですが、電子書籍を本格的にはじめたいとおもい、準備をしているところです。ロマンサーの場合、50MBまで無料というものと、月額二万五千円というものの二種類があるようですが、その間の料金設定があれば、検討したいとおもっているのですが」
Kさん 「電子書籍は何作品くらい、作る予定ですか」
わたし 「年内に五作品、来年は一年間で十作品くらいだとおもいます」
Kさん 「五作品くらいなら、50MB以内で収まるとおもいますよ。万一、それを超えても有料五百円で150MBまで利用していただけます」
わたし 「でも、50MB以内なら無料というのは、個人のセルフパブリッシングにしか利用できないのではないですか」
Kさん 「出版社が販売目的で使っていただいても問題ありません」
わたし 「え! そうなんですか。てっきり、個人だけかとおもっていました。ただ、私の場合、デジタル、ネット領域について、基本知識が欠落しているので、多少、お金を払ってでも、きちんとしたサポートのあるところでないと、不安なのです」
Kさん 「メールで問い合わせをしていただければ、だいたいのことは、お答えできるとおもいます」
わたし 「え! そうなんですか。てっきり、無料だけど、サポートはないという設定だとおもっていました」
Kさん 「JPEGって、どういう意味ですか、という類の質問はさすがに困りますが、ロマンサーで電子書籍を作るうえでの技術上の質問であればOKです」
セミナーの内容は、ワープロソフトのワードをつかって、見出しをつけ、画像を挿入したファイルを作れば、あとはロマンサーで変換するだけというシンプルな方法を、実践的に解説するものでした。
これなら、自分にでもできそうだ、と確信がもてました。
だいたい二か月でEPUB電子書籍が完成した
この日から、猛然とEPUB作りに邁進して、ボイジャー社のサポートをうけながら、電子書籍を五作品、作成し、十二月上旬には発売開始になりました。
セミナーに参加した十月中旬の段階では、五里霧中であったことからすると、二か月足らずで完了したのは思いのほかのことでした。
結論を申し上げれば、電子書籍を作るうえで、EPUB変換という障害は確かにあるけれども、それは消滅しはじめているということです。
デジタルに自信のない、ど文系の五十代の元新聞記者でも、時間をかければできる程度には、電子書籍づくりの障害は低くなっているということです。
いま、こうやってブログと電子書籍づくりを併行してやり始めているわけですが、電子書籍づくりはブログよりもすこしだけ面倒──という程度ではないかとおもいます。
結局、私がボイジャーに支払ったのは、何千円かのセミナー参加費だけですが、セミナーに行かなくても、なんの問題もないくらい制作方法はシンプルです。
ロマンサーをつかった電子書籍づくりの詳細は、追って報告します。
(つづく)
超零細出版社にとって、電子書籍EPUBファイルの自作は最低条件
どうして電子書籍のEPUBファイルを自分で制作する必要があるかというと、専門の業者に依頼するとけして安くはない料金がかかるという至極単純な理由によります。
福岡県筑後市、JR九州の羽犬塚駅前の羽犬像。桃山堂電子書籍『秀吉と翼の犬の伝説』より。
EPUBファイル制作の価格
三年ほどまえ、一冊だけ電子書籍をつくったとき、EPUBを自作しようとして、セミナーに行ったり、教則本を買ったり、いろいろと研究したのですが、結局、わけがわからないまま断念して、複数の専門の業者に料金を照会しました。
活字中心の200ページくらいの紙の本を出版したあと、そのテキストデータを、EPUBにする案件ですが、だいたい、3万円前後でした。
今回は、すんなり自分でEPUBが制作できたので、EPUB変換の業者に問い合わせてはいないのですが、いま、ネットで引いたところ、だいぶ安くなったといっても、二万円から一万何千円くらいはかかるような感じです。
もっとも、EPUB変換といっても、複雑な物理学の数式がたくさん出てくるファイルと文字ばかりでほとんど見出しもない小説とでは、まったく作業量が違うのですから、ケースバイケースで平均的な価格はよくわかりません。
仮に二万円としてみても、EPUB変換を業者に依頼できるのは中堅以上の出版社とか売れ筋の本である程度の売上が見込める作品にかぎられるのではないでしょうか。
EPUB変換業者に出すお金などない
たとえば、紙の本として、三千部とか二千部くらいのやや専門的な本を電子書籍として出版して、どれくらい売れるかわからないのに、業者に二万円払えるかというと躊躇してしまうとおもいます。
まったくの印象ですが、電子化されている本の大半は、紙の本としてもよく売れている本が多いのではないでしょうか。マンガとかライトノベルとか。
当たり前といえば、当たり前ですが。
超零細出版社を運営している私は、電子書籍を手がけるとしたら、EPUBファイルを自分で作ることは絶対条件であるとおもっていました。
三年まえに電子書籍を一作だけ出して、そのあと中断していたのは、私のデジタル的な知識ではEPUBの自作ができなかったからです。
今回、電子書籍に再チャレンジしたのは、いまなら、それができるかもしれないとおもったからです。
自分で言うのも変ですが、非常に偏った内容の本ですから、たいして売れるはずもないのですが、電子書籍の自作というハードルをクリアーしたことで、今後、いろいろと面白いことができるのではないかと、展望だけはふくらんでいます。
(つづく)