桃山堂ブログ

歴史、地質と地理、伝承と神話

<未来の本>のための、実現しそうもない企画書

最近、出版した文春新書『邪馬台国は「朱の王国」だった』を手渡しかたがた、大学時代の友人と久々に会って、もろもろの話をしたのですが、この本の背景に<博物館/資料館>的なネット空間を築くことができれば面白いのに、というようなことを言われました。このアイデアを紹介しつつ、そもそもそんなことが可能かどうかを考えてみます。

 

本の背景に<博物館>的なネット空間を築くこと(案)

この友人は長年、本や雑誌の編集にかかわっていた人(現時点では出版業界を外から見ている人)なので、目下の出版業界がたいへん厳しい状況にあり、紙の本という形態に未来があるのかという話になってしまいます。

 

もちろん、本といっても多種多様で、純文学の小説のように、印刷された文字で独自の閉鎖空間をつくりあげるのが、本の王道なのかもしれませんが、現在の本づくりにおいて、インターネット空間を無視することは不可能であるのは言うまでもありません。

私が書いた『邪馬台国は「朱の王国」だった』は、取材と資料をベースにしたものですから、調査と執筆の時点からネットに依存しているともいえます。

 

友人が言っていたのは、取材、執筆のときに集めたデータを、ことごとくネット上に公開して、ネット上で小さな専門博物館──朱(辰砂)という鉱物と邪馬台国についてのデータ集のようなものが構築できれば、本としての奥行きが増すはずだということでした。

 

たとえば、

  • 取材したときのインタビュー、あるいは取材現場を動画で公開する
  • 取材のときに集めた関連するデータ、資料をそのまま公開する
  • 言及・参照している本・論文について、その詳細をネットで紹介する

というようなアイデアが、二人で話しているなかで出ました。

 

この本のテーマである朱(辰砂)という鉱物についての<ネット資料館>であり、この本の制作過程で入手したデータを公開するということだと思います。

 

センスの良いウェブデザイナーさんによって、一冊の本の背景を、多層的かつ立体的に、ビジュアルな魅力をもってアピールすることができれば、より充実した読書体験を提供できるのでは──。

それこそ、ネット空間と渾然一体となった、未来につながる本の形態では──。

ソロバン勘定のうえでは、良い意味での宣伝広告効果を期待できるのではないか──。

 

  <未来の本>への夢と希望は、どんどん膨らみます。

 
夢と現実

でも、現実的に<博物館/資料館>的なウェブサイトを構築するとなると、一週間や二週間ですむはずがありません。

 

文字データを作成するにも、紙の本一冊つくるのに匹敵する労力がかかりそうな気がします。

それを誰が担当するかというと、当然、私がやることになるのですが、そこまでの時間を<ネット博物館>に費やすことができるのか、というとわれながら疑問です。

 

というわけで、予算的にも、労力のうえでも、本とリンクしたネット上の<博物館/資料館>という企画が、実現する可能性はきわめて乏しいという結論になるのでした。

 

というより、そんなこと無理なことは、わかった上での架空の企画会議をしていたのだともいえます。

 

残念ながら、おしゃれなウェブサイトを構築する予算も能力も、私にはありませんから、次善の策と申しますか、現実においてできることとして、このブログに『邪馬台国は「朱の王国」だった』に関連するデータを、可能なかぎり掲載してみようという気持ちになっています。

 

関連する写真はすでに何枚か掲載しましたが、まだ、予定の半分にも達していません。やりはじめると、結構、時間がかかることがわかってきました。

ウェブサイトの仕事は、どこか肉体労働に似た根気を要求しますが、どうも、私はそれが得意ではありません。

 

言及・参照した本を紹介することは、やろうと思えば、できることなので、今週はお盆休みということにして、この作業に集中しようとかんがえているところです。